泉ガーデンレジデンス始めました

「日本の不動産もグローバルスタンダードによって、金融商品として取引されるようになるだろう」。 これは、日本のある大手不動産会社の社長が最近よく使う口癖です。
皆さんはこの社長の見通しが正しいと思われるでしょうか。 私にはとても正しいとは思えません。
少なくとも、いままでどおりやっているだけでは永遠に無理です。 不動産が自然と金融商品並みに取引されるようになると期待しているのは、金融のことを何も知らない不動産業者だけです。
日本の不動産業界は、ここら辺の認識があまりにも遅れているのです。 ここで視点を変えて、不動産投資のグローバルスタンダードとは何かを考えてみましょう。
そもそも多くの日本人がグローバルスタンダードなるものを唱え始めたのは、橋本首相が96年秋に提唱した「日本版金融ビッグバン」構想に盛り込まれた3つの柱、フリー(自由)、フェアー(公正)、グローバル(国際化)に触発されたからではないかと思います。 確かに、金融の世界では日本は徐々にではありますが国際化を進めつつあります。
いまとなっては信じられない話ですが、なにせ7年ぐらい前のバブルの頃までは、東京が国際金融センターになると多くの人が信じていたくらいです。 その後長い低迷が続いているとはいえ、いまでも日本の金融市場は大きさではアメリカに次ぐ世界第2位の位置にいるのです。
特にこの3年間は、日本の超低金利が世界の金融市場に投機マネーを大量供給する構図が続いているために、世界の投資家にとって、日本はかけがえのないマネーディスペンサーの役割を演じていることになります。 株式市場も、いままで以上に外国人投資家の投資態度(いわゆるガイジン買い、ガイジン売り)に左右されるようになってきました。

金融市場が洗練されているかどうかは別として、日本初のマネーの動きが国際化していることだけは事実です。 不動産市場の国際化はどうでしょうか。
昨今外国人投資家が日本の不動産投資に多大なる関心を持っていると話題になり、また実際に香港やシンガポール資本が日本の商業地を高値で購入する動きも見られます。 しかし、これらの例は、ほとんどが純粋な不動産投資ではなく、本社ビルなどの実需の買いであることに注意する必要があります。
しかも、投資家はほとんどがアジア勢で、特に不動産投機好きでは世界一といわれる中国系の投資家だけです。 青い目の投資家は、まだ本格始動していません。
つまり、不動産投資という観点からは、日本には世界から投資マネーを集められるだけの不動産投資市場がないのです。 この点で日本の不動産市場の国際化は、金融市場に比べてはるかに遅れています。
不動産投資市場が存在しないところでグローバルスタンダードを論じても意味がありません。 先の金融ビッグバンの標語でいえば、フリーは、銀行持株会社の業務範囲から不動産会社が除外された例で明らかなように、金融と不動産の融合を妨げる動きばかりで自由な相互参入の道は閉ざされ、フェアーは、投資情報としての不動産の情報公開がまったく進む気配がない点で失格、そしてグローバルは、外国人投資家が寄りつこうともしない法制度や会計基準の不備、それに不動産業界で英語を話せるスタッフがあまりに少ないことによってまったくの論外です。
唯一自由化されているといえるのは、外為法が外国人による日本国内の不動産購入に寛容なことぐらいです。 日本の場合は、まず外国人投資家がグローバルスタンダードで投資判断ができるような不動産投資市場をつくることからスタートしなければなりません。
欧米では、資産運用の手段として不動産を対象にした商品がこれだけ普及しているのです。 個人も法人も、比較的安心して不動産に投資する土壌と仕組みが出来あがっているのがわかります。
市場規模も日本に比べてはるかに大きく、特にアメリカのREITは、この3年間で新たなブームを起こすほど人気化しています。 不動産投資市場の開店休業状態が続く日本と比べて、何とも力強いかぎりです。

不動産投資のグローバルスタンダードとは、これら各国のように不動産投資市場がまともに機能し、国際レベルでみても投資適格市場として認知されるような基準をつくることだと解釈するべきです。 グローバルスタンダードを意味不明な流行語として使うのではなく、一刻も早く世界から認知されるような本格的な不動産投資市場をつくるべきなのです。
私は日本が参考にするべき不動産投資市場は、アメリカとドイツの市場だと判断しています。 米独の不動産投資市場は、各々の金融制度と投資に対する哲学の違いから実に対照的なシステムをつくり上げています。
日本がいまなすべきことは、日本らしさを生かした不動産投資市場をどうやってつくり上げるべきかという独自の哲学を確立することです。 アメリカ流をとるのかドイツ流でいくのか、それともどちらとも違う日本流の市場をつくるのか、それを大いに議論すべきだと思います。
冒頭の社長の口癖のような、浮ついた幻の不動産投資市場を信じてばかりいては、進歩はないのです。 アメリカは、世界で最も進んだ金融市場を持つと同時に、不動産投資市場においても他に類を見ないほど先進的な市場原理を取り入れています。
そして、金融市場にも不動産投資市場にも共通して貫かれている市場哲学は、「市場取引には常に時価を取り入れる」ことです。 アメリカでは、売買はもちろんのこと、発行、流通、会計に至るまですべての取引は時価によって行われています。
この時価取引主義を市場原理の中枢においた点こそが、いまのアメリカの強さの秘訣なのです。 特に不動産と金融において、アメリカがいまでもかたくなに時価取引主義を志向している象徴的な出来事がありました。
先のアメリカ大統領選挙の際に、L財務長官が発表した「都市再開発債」構想がそれです。 世界の投資家に向けてL財務長官はこう提唱しました。
「アメリカの大都市には、いまだに多くのスラム街が残っています。 都市再開発債は、スラム街の再開発資金を調達するための債券ですから、投資家の皆さん是非購入してください。
財務省は、発行に先立ってまず債券の流通市場(セカンダリーマーケット)をつくります。 そして債券が値上がりした際のキャピタルゲイン(値上がり益)は非課税扱いとしますから、あとは投資家の皆さんの自己責任で思う存分やってください」。
内容といい、その具体性といい、L財務長官の提案は、日本の大蔵大臣のそれとは随分違うと思いませんか。 もしも日本の大蔵大臣だったらこう発表するのではないでしょうか。

「この債券は国が元本を保証するものですから安全です。 皆さん安心してお買い求めください。
流通市場は後日できる可能性はあります。 とにかく国が保証しているわけですから絶対大丈夫です」と。
この発言を対比してみれば、市場原理に関する両国の姿勢の違いは明らかです。 時価による市場主義と自己責任の原則を貫くアメリカと、市場があるとはいってもほとんど機能せず、オカミの後光がないと安心できない日本とはこうも違うのです。
このL財務長官の構想には、アメリカの市場原理を特徴づけるいくつかの重要なエッセンスが含まれています。 1つは、債券を発行する前からその債券の流通市場をつくってしまうことです。

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